BIG EYES|ティム・バートンも驚いたウソのような本当の話 Filmarks 1月上映作品 期待度No.1
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ビッグ・アイズ|原題:Big Eyes/2014年/アメリカ映画/106分/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/字幕翻訳:稲田嵯裕里|配給:ギャガ|bigeyes.gaga.ne.jp|© Big Eyes SPV, LLC.  All Rights Reserved.|2014.01.23 LOADSHOW A Tim Burton Film | Amy Adams Chistoph Walts The Weinstein Company Presents  A Tim Burton / Electric City Entertainment production  A Tim Burton film  Amy Adams  Christoph Waltz  ‘Big Eyes’  Danny Huston  Jon Polito  Krysten Ritter
Jason Schwartzman  Terence Stamp  Casting By Jeanne Mccarthty, CAS  And Nicole Abellera, CAS  Music By Danny Elfman  Costume Designer Colleen Atwood  Edited By JC Bond  Production Designer Rick Heinrichs  Director Of Photography Bruno Delbonnel, AFC, ASC
Executive Producers Bob Weinstein  Harvey Weinstein  Jamie Patricof  Katterli Frauenfelder  Derek Frey  Produced By Lynette Howell  Scott Alexander  Larry Karaszewski  Tim Burton
Written By Scott Alexander & Larry Karaszewski Directed By Tim Burton
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BIG EYES|INTRODUCTION

世界的ヒットメーカーにして不世出のアーティストティム・バートン監督待望の最新作は、アート界を揺るがしたゴースト・ペインターの実話!

 

一世を風靡した画家の絵は、妻が描いていた─今、自分を取り戻す闘いが始まる!

恐るべき演技力で魅了する名優二人と、脇を固める個性派俳優たちの濃密なコラボレーション

一流スタッフの力と、バートンが愛するキーンの絵画で完成させた世界にたった一つのバートン・ワンダーワールド

 アンディ・ウォーホルですらその魅力を認め、60年代アメリカで一大ブームを巻き起こした、絵画〈ビッグ・アイズ〉シリーズ。作家のウォルター・キーンは一躍、時の人となる。
 しかし…。
 その絵画は1枚残らず、口下手で内気な彼の妻、マーガレットが描いたものだった!富と名声を手に入れた夫はセレブたちとハデに遊び歩き、妻は1日16時間、絵を描き続けた。
 そして、10年…。
 心の内のすべてを絵で表現してきたマーガレットは、「このままでは自分を失ってしまう!」と〈告白〉を決意。だが、天才的なウソつきのウォルターは「妻は狂っている」と反撃、遂に事態は法廷へともつれ込む…。マーガレットの魂〈ビッグ・アイズ〉を懸けた、前代未聞のアートバトルの行方は?

 『チャーリーとチョコレート工場』、『アリス・イン・ワンダーランド』などファンタジーの傑作を世に送り出し、大ヒットを成し遂げてきたティム・バートン監督。絵画や造形などアートでも独特の才能を発揮し、世界各国で開かれている展覧会「ティム・バートンの世界」では、次々と入場者記録を樹立している。
 唯一無二の世界観でファンを魅了し続けるバートン監督の待望の最新作は、バートン自身も耳を疑った、実在のゴースト・ペインターの物語。アメリカ史上最低と呼ばれた映画監督を描いた『エド・ウッド』以来20年ぶりにして、遥かに奇想天外な実話の映画化だ。

 マーガレット・キーンに扮するのは、アカデミー賞®5度ノミネートの記録をさらに更新するに違いない、『ザ・ファイター』、『アメリカン・ハッスル』のエイミー・アダムス。繊細で傷つきやすい少女のような心を抱えたマーガレットが、遂に“自分自身”を取り戻すために立ち上がる姿を情感豊かに演じた。か弱かった女性の爽快な逆転劇には、熱い喝采を送らずにはいられない。
 ウォルターには、『イングロリアス・バスターズ』、『ジャンゴ 繋がれざる者』でアカデミー賞®を2度獲得したクリストフ・ヴァルツ。妻をゴーストに仕立て上げて世間を欺くだけでなく、実は妻にもあり得ない嘘をつき続けていた稀代のペテン師であると同時に、誰もが魅了されるカリスマ性やユーモアも持ち合わせていた実在の男の光と影を、圧倒的な説得力で演じきった。

 その他、『ヒッチコック』などの名脇役ダニー・ヒューストン、『グランド・ブダペスト・ホテル』のジェイソン・シュワルツマン、『ワルキューレ』の名優テレンス・スタンプ、大ヒットTVシリーズ「ブレイキング・バッド」のクリステン・リッターなど、クセのあるキャラクターを演じてきた個性派俳優たちが濃密な競演を繰り広げる。

 スタッフには、バートン作品の最大の理解者にして共犯者たちが集まった。物語の緊張感を盛り上げる不穏な旋律を書き上げたのは、バートン作品のほとんどを手掛けるダニー・エルフマン。ポップでキッチュな60年代カルチャーが溢れたナイトクラブや、キーンの豪邸などのセットを作り出したのは、『スリーピー・ホロウ』(99)の美術でアカデミー賞®を獲得したリック・ハインリクス。プレタポルテの台頭によるファッション革命から生まれた、今見てもキュートな60年代スタイルを再現したのは、アカデミー賞®に3度輝く『アリス・イン・ワンダーランド』のコリーン・アトウッド。

 全編を彩る〈ビッグ・アイズ〉シリーズは、バートン監督自身が長年の大ファンで、作者のマーガレット・キーンに絵を依頼したこともある。バートン監督の世界とも通じる、不気味カワイイ作風が時代の先を行き過ぎたのか、当初は批評家のウケは良くなかったが、世界中の人々から愛されていた。アンディ・ウォーホルは、「もし、魅力がなければ、これほど多くの人々に愛されない」と語っている。
 時として人間は、なんと不思議で奇妙で、愚かしくも愛すべきものなのか─大きな瞳だけが見つめていた驚愕の秘密が今、明かされる─!

BIG EYES|DIRECTOR PROFILE

Tim Burton|ティム・バートン

1958年、アメリカ、カリフォルニア州生まれ。ディズニーの特別奨学金でカリフォルニア芸術大学に入学、1979年にアニメーターとしてディズニーに入社する。短編アニメ『ヴィンセント』(82)で監督デビューを果たした後に退社し、『ピーウィーの大冒険』(85)で初めて長編映画の監督を務める。
1989年、『バットマン』が世界的大ヒットを記録、それまでのヒーローものとは一線を画す独自の世界観が高く評価される。続く『シザーハンズ』(90)では、ダークファンタジーと切ないラブストーリーを一体化させ、広く女性ファンも獲得する。その後も、英国アカデミー賞にノミネートされた感動作『ビッグ・フィッシュ』(03)、日本でも大ヒットを記録したコメディ『チャーリーとチョコレート工場』(05)、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたサスペンス『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(07)、おとぎ話の世界を実写化した『アリス・イン・ワンダーランド』(10)など、多彩なジャンルを“バートン・ワールド”に塗り替え、唯一無二の映像作家として広く愛されている。
その他の主な作品は、『エド・ウッド』(94)、『スリーピー・ホロウ』(99)、『PLANET OF THE APES 猿の惑星』(01)、『ダーク・シャドウ』(12)、アニメ『フランケンウィニー』(12)など。
映画以外にも様々な芸術活動で特異な才能を発揮、2009年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)が、スケッチからデッサンや写真、映画製作用のキャラクター模型などを集めた「TimBurton展」を開催。MoMA歴代3位の入場者数を記録し、パリ、トロントなど世界5都市を巡る。その後、展示形態をテーマ毎に変えて新たに150点の作品を加えた「ティム・バートンの世界」が、2014年3月にチェコ、11月より東京で開催されて大成功を収め、2015年2月より大阪にも登場する。

監督│ティム・バートン
 Written by Scott Alexander, Larry Karaszewski/ 脚本│スコット・アレクサンダー、ラリー・カラゼウスキー Music by Danny Elfman / 音楽│ダニー・エルフマン

BIG EYES|STAFF PROFILE

CLICK NAME & SHOW DETAIL
Production Design by Rick Heinrichs / 美術│リック・ハインリクス Costume Design by Colleen Atwood / 衣装│コリーン・アトウッド
Cinematography by Bruno Delbonnel / 撮影│ブリュノ・デルボネル Film Editing by JC Bond / 編集・ジェイシー・ボンド

BIG EYES|MARGARET KEANE

Margaret Keane|マーガレット・キーン

1927年、アメリカ、テネシー州ナッシュビル生まれ。幼い頃から絵を描くのが好きで、1950年代半ばにはサンフランシスコのノースビーチ野外展示会に、大きな目をした子供たちの絵を並べる。そこでウォルター・キーンと出会い、結婚する。ウォルターはマーガレットの絵を、ビートニククラブ〈TheHungryi〉の客席で売るようになる。ある時、夫が作者は自分だと偽っていることに気付いたマーガレットは激怒するが、「人は画家本人と話していると、その作品を一層買いたくなる」と釈明され、更にすでにに購入した客が作者は別人だと知れば訴訟問題になると脅されて、夫の言いなりになってしまう。1960年代初めには、マーガレットが手掛けたポスターやポストカードは、ウォルターの名前でミリオンセラーとなり、ナタリー・ウッド、ジョン・クロフォード、ジェリー・ルイス、キム・ノヴァクら著名人が競って原画を買い求める。キーン夫妻は富を手に入れ、豪邸では毎日パーティが行われたが、マーガレットは誰にも会わず、1日16時間絵を描き続けた。結婚10年目についに離婚、マーガレットは1970年にはすべてを公表する。その後、反撃に出たウォルターを訴える。裁判の顛末は、法廷でキャンバスと絵の具が用意され、裁判官の目の前で実際に〈ビッグ・アイズ〉を描かせるという前代未聞の方法がとられた。裁判は勝訴。しかしウォルターから賠償金を支払われることはなかった。現在87歳を迎えたマーガレットは、北カリフォルニアのナパのワイン畑にある一軒家で毎日のように絵を描き、取材に答えて「この子供たちは、私が絵という方法以外で表せない私自身の深い感情そのもの」だと語っている。彼女の絵は世界中の人々から愛され、ブライス人形やアニメ「パワーパフガールズ」、現代の芸術家たちにも影響を与えた。

Margaret Keane マーガレット・キーン|制作作品 作品タイトル/左:Tomorrow Forever=1963年製作 右:The Ballerina=1962年製作©Courtesy Keane Eyes Gallery, San Francisco, CA MARGARET KEANE OFFICIAL WEBSITE

BIG EYES|COLUMN

 

ふたりの大きな眼 林 卓行│玉川大学芸術学部准教授 (現代芸術論)

 「キーンは驚くべきことをやった。その作品はすばらしい。そうでなければ、多くの人に愛されたりはしない。」─アンディ・ウォーホルのこのことばで本作は幕を開けます。ウォーホルといえば「ポップ・アート」を代表するアーティストですが、たしかにそのポップ・アートと本作の主人公キーンの描く”ビッグ・アイズ”(=大きな眼)とでは、いくつか共通点があります。
 そのひとつは、どちらも1960年代初頭のアメリカで「ポピュラー(=大衆的)」であろうとしたことです。けれどさらにこの物語の核心に関わる、もうひとつの共通点があります。どちらもおなじあるひとつの問題に取り組んだのです。それは芸術作品と、その作品を生んだ人間の「個性」の関係をどう考えるか、という問題でした。ただそれに対して出した答えは、両者で正反対だったのですが。

 たとえばウォーホルは、キーンの“ビッグ・アイズ”について、「いい作品でなければあんなにたくさんの人々に愛されない」といいます。しかしそれはじつのところ、芸術家の「個性」とそこから生じる作品の希少性こそが芸術作品の価値だ、と考える古いアートの世界に向けた、毒を含む批判なのです。ちょうどウォーホルが好んで描いたキャンベル・スープやマリリン・モンローがそうであったように、キーンはその作品を自ら印刷物にまでして大量に売りまくり、「アート」が評価される絶対条件のひとつだった「希少性」を打ち破りました。ウォーホルはそのことを讃えたのです。
しかし、そのさきのところでキーン夫妻と「ポップ・アート」の考え方は正反対に分かれます。

キーン夫妻は、それがこの物語の最大の焦点ですが、大量に売られたその絵が夫妻のどちらの「個性」によるものかをめぐって、はげしく争います。いっぽう「ポップ」は、キーン夫妻たちも含めて一般的な、「作品には個性が必要」というこの考えかたを、逆手にとりました。ポップの作品がモデルにしたのはまさにポピュラーなもの、つまり「みんなが知っているけれどだれが作ったものかはわからないもの」です。ウォーホルの描くマリリン・モンローはその好例で、それはもともと映画の宣伝用に撮影された写真を写し取って、機械的に大きさや色を変化させただけのものでした。つまり「ポップ」はあえて、「没個性」に見える作品を作ったのです。なぜでしょうか?

それは「個性」がしのぎを削るアートの世界では、そうした没個性が逆にきわだって個性的に見えるからです。この逆転の発想にこそ、ポップ・アートが革新的と言われる理由があります。
 そしてその点では、ティム・バートンの《ビッグ・アイズ》は、徹底してポップ・アートの革新以前の世界を描いています。物語のなかにはくりかえし、この絵の作者はだれなのか、作者の「個性」はどこにあるのか、と問いかける場面があらわれます。1950年代当時じっさいにアメリカの美術界を席巻した「抽象表現主義」ふうの作品も登場しますが、その激しい身振りによる(=ジェスチュラルな)タッチや色彩が、なにも具体的なものを描き出していないのだとすれば、そこには作者のどのような感情が込められているのか。

ウォルターが描いた(?)パリの情景は、彼のどんな体験に基づいているのか。そしてマーガレットの描く大きな眼は、彼女のどんな思いを映し出しているのか。
 ちなみに「感情をもっともよく表現する」と彼女が語るこの大きな眼も、ポップ・アートの作品であまり見ることはありません。ポップのアーティストたちは、だいたい人間の眼や瞳孔を小さく描きます。そうして人物像から「目力」を消すのです。
 そこからすると、バートンはおもしろいところに文字どおり眼をつけたと思います。それというのも、こうした「ポップ・アート」の革新から約半世紀を経た近年では、「大きな眼」が描く画家たちが注目されているからです。日本では奈良美智が知られていますが、ほかにも松井えり菜、

アメリカでもジョン・カリンのような画家が、それぞれに「個性」的なスタイルで「大きな眼」の人物像をよく描いています。いうまでもなく、目が大きいというのはそこから発達するこどもの顔の特徴ですが、彼らもまたもういちどこどものような「大きな眼」を通じて、個性や感情の表現を復活させようとしているようです。
 そして、さらに90年代以降活躍するアーティストで、わたしたちはもうひとり大きな眼を描く人物をよく知っています。バートン自身がそうです。キーンの描く眼が瞳孔も大きいのに対し、バートンの眼では瞳孔はちいさな点として描かれるだけですが、あの印象的なキャラクターたちの最大の特徴は、いずれにせよその「大きな眼」にあります。ふたりの描く「大きな眼」、それはキーンとバートンという、半世紀を隔てたふたつの「個性」を結びつけるものでもあるのです。

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